ベタだけじゃない。マジックリーフの効果・使い方

活用テクニック
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ベタに良いと評判ですが、効果を知らなければただの枯れ葉にしか見えない「マジックリーフ」。
その辺の落ち葉と何が違うの?枯れ葉にお金をかけるのもなぁ……と思ったことはありませんか。
ベタ以外にも使えて調べるほどに実はすごい。“マジック”の名にふさわしい効果について解説します。

マジックリーフとは

マジックリーフはモモタマナ(Terminalia catappa)というシクンシ科の熱帯性落葉高木の葉です。
(シクシン科との表記を多く見かけますが、シクンシとは生薬名の使君子に由来するもので“シクシン”ではありません。)
モモタマナの木は別名をコバテイシと呼び、アフリカやオーストラリア北部、東南アジアなど熱帯地域の海岸に広く自生しています。日本の場合、沖縄では街路樹などにも見られますが、基本的には沖縄諸島や小笠原諸島の海岸と限られた地域でしか見ることができません。

マジックリーフは「アンブレラリーフ」とも呼び、海外ではさらにいくつかの別名があります。もっぱら「インディアンアーモンド」の名で親しまれているようです。葉が15~30cmと大きいのは、モモタマナが高さ20mほどにも成長する高木だからでしょう。

マジックリーフの効果

マジックリーフの原料となるモモタマナの葉は、日本でも健康茶や化粧品成分エキスとして利用されていますが、海外では古くから民間療法に用いられてきました。

人々の健康に良いということは、魚の健康にも良いと考えたくなるものです。実際に東南アジアのベタのブリーダーはベタのヒレの保護や産卵促進を目的に重宝しています。また、モモタマナの学名であるTerminalia catappaで調べてみると、アクアリウムに関連した研究レポートが多く見つかります。
ここではよくいわれるマジックリーフのはたらきについてまとめました。

弱酸性の水質「ブラックウォーター」を維持する

マジックリーフを水に入れると分解されタンニンが徐々に溶け出していきます。透明な水から薄い紅茶のような茶色がかった色に変化しますが、この茶色の水がいわゆる「ブラックウォーター」です。

タンニンにはフミン酸やフルボ酸といった酸性の化合物を含んでおり、これらが水中のミネラル成分と結びついて硬度を上げるカルシウムやマグネシウムなどの濃度を低下させます。その結果、水質を多くの魚が好む弱酸性の軟水へと変えるのです。急激なpHの変化は魚にショックを与えてしまいますが、マジックリーフなら緩やかにpHを下げていく点でも安心できますね。

バクテリアを殖やす

水に入れるとバクテリアによってマジックリーフの分解が始まります。マジックリーフを水につけたままでいるとヌメリが発生しますが、これはバイオフィルムといって増殖したバクテリアの住み家のようなものです。

バクテリアは分解者としての役割を持つため、美観を損ねない、生体に影響を及ぼさない限りはそのままで良いでしょう。また、インフゾリア(動物性プランクトン)が出ることもあるようです。インフゾリアは稚魚や稚エビのエサにもなるため、ヌメリが出るまで3週間程度水につけこんだマジックリーフを水槽に入れてそれをエサ代わりにするという方法もあります。

発色が良くなる

マジックリーフを使うことで飼育水を弱酸性で茶色がかったブラックウォーターに変化します。透明な水よりも少し視界が悪くなる分、臆病な魚にとってはストレスも軽減されるようです。
何よりブラックウォーター出身の魚にとって、まるで故郷のような環境は心地が良いことでしょう。

特に、赤系のテトラの仲間やラスボラなどのコイの仲間、ワイルドベタなどは発色もより鮮やかになるとされていて、効果がよく現れる魚種といえます。

健康を維持して病気への抵抗力をサポート

マジックリーフからタンニンが溶け出すことでブラックウォーターとなりますが、一般的に植物のタンニンには抗菌作用があります。水カビや細菌性感染症の発生リスクの低減を期待できるでしょう。
いくつかの研究においても、マジックリーフの原料となるモモタマナの葉の抽出物の抗菌性や抵抗力について注目されています。天然のサプリメントといえるかもしれません。

病気への抵抗力をサポートしてくれるとはいえ、病気にかかってしまった場合は魚病薬を使ったほうが確実です。

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繁殖をサポートする

ブラックウォーターを作ることで自然に近い水質環境となり、繁殖活動がしやすくなります。
海外のベタのブリーダーたちも産卵能力を高めるものとしてマジックリーフを導入しているようです。
また、マジックリーフを入れてから数日間は浮いているため、ベタやグラミーのオスは葉をサポートにして泡巣を作ることもあります。

ヒレを保護する

ベタのヒレのケアにもマジックリーフは好んで使われています。

エサになる

バクテリアが殖えるという項目でも述べたバイオフィルムに加えて、ボロボロになったマジックリーフ自体、魚やエビの良いエサになります。特に有効な魚種は以下のとおりです。

オトシンクルスの仲間

コケ取りに導入されるオトシンクルスは、水槽内のコケがなくなると食べるものがなく、人工飼料にもなかなか餌付けにくいです。

そんなときにマジックリーフを入れてあげるとオトシンクルスの良いエサとなって、生存率が上がります。

エビ、ザリガニの仲間

ビーシュリンプなどの淡水エビやザリガニの仲間は自然下でも落ち葉などを摂取しています。

特に稚エビにとっては良い隠れ家になるだけでなく、常時食べられるエサになり、生存率が大きく改善します。稚エビが生まれてもいつの間にか数を減らしてしまうという方は、マジックリーフを試してみると良いでしょう。

カニの仲間

マジックリーフは、水棲、陸棲のカニのエサとしても優秀です。
カニの仲間はエサを食べ散らかし、これが汚れだけでなくアンモニアやニオイの原因になります。

マジックリーフなら腐敗したり食べ散らかしたりしても、水槽内が汚れにくく、日持ちもします。


マジックリーフは水槽に入れて2~3日経過して少し柔らかくなったほうが食い付きが良いです。
上記の生体を飼うときは事前に準備しておくと、すぐにエサとして使用することができます。

マジックリーフは自然素材につき葉の大きさなどに差異が出やすく、ブラックウォーターの濃度も一定ではない点に留意してください。

マジックリーフの使い方

マジックリーフの使い方は特に難しくありません。水に入れておけば時間の経過とともにタンニンがゆっくり溶け出していきます。そのまま水槽に入れるだけでも良いですし、水槽に対して大き過ぎる場合はちぎって使っても問題ありません。ちぎって使う場合はネットなどに入れておくと取り出しがスムーズに行えるでしょう。あるいは、パックにしたものをフィルターにセットすれば水景を邪魔しません。

マジックリーフをそのまま水槽に入れるとしばらくは浮いていますが、やがて底に沈みます。マジックリーフから溶け出す茶色い成分、タンニンが出なくなってきたら交換のサインです。新しいものに取り換えてください。エビ水槽に使う場合は、葉が食べられてからでも良いでしょう。

チャームでは、リーフそのもの、ちぎったもの、パック化したものとさまざまなタイプのマジックリーフ(アンブレラリーフ)を取り扱っています。

マジックリーフが効果的な生き物

マジックリーフを効果的に使用するためにも、飼育している魚種が原産地でどのような環境に暮らしているのか深く理解しておくことが重要です。つまり、すべての魚に使えるわけではありません。

基本的には、落ち葉が堆積した沼地に棲む魚種(ベタやアピストグラマなど)のほか、ブラックウォーター河川に棲む魚種(一部のカラシン、コリドラスなど)に向いています。それ以外の環境(河川や湖)に生息する魚種には向いておらず、むしろ逆効果になることもある点に注意が必要です。

効果的ではない魚種の一例がアルカリ性の水質を好むアフリカンシクリッドです。メダカや金魚にも向いていません。マジックリーフと相性が悪い生体の多くは、化石サンゴと相性が良いです。

ビーシュリンプに関しては、マジックリーフ(酸性)と化石サンゴ(アルカリ性)の組み合わせがむしろ有効となります。これは、マジックリーフ由来の酸性物質と化石サンゴが反応することでビーシュリンプがカルシウムを吸収しやすい水環境になるためです。
ビーシュリンプの殻がしっかりしやすくなって、稚エビの斃死へいし率も下がるようになります。

ベタ

海外のベタのブリーダーたちは色揚げや産卵促進を目的にマジックリーフを積極的に取り入れているようです。ベタは本来、水田などで暮らしており、ブラックウォーターの水は生息環境の色に近いといわれています。

ベタはヒレと発色の美しさが魅力です。マジックリーフを使うことでより美しさを引き出せるでしょう。ベタは闘争心が強く、繁殖目的でオスとメスを入れてもケンカをすることがあります。マジックリーフは、産卵を促すことに加えて傷ついたヒレのケアにも好んで使われます。

アピストグラマ

アピストグラマはブラックウォーター出身の熱帯魚です。ベタ同様にマジックリーフとの相性が良い魚として知られています。

水槽環境をブラックウォーターにすることで、“泳ぐ宝石”と称されるアピストグラマの美しさをより楽しむことができるでしょう。

アピストグラマは繁殖や産卵後に、気が荒くなったり神経質になったりしやすく、オス、メスがボロボロになってしまうことがあります。
傷口から病気に感染するリスクを考えるとマジックリーフを活用したいものです。

種類によってはpHを下げすぎないほうがうまくいくものもいます。
改良系アガシジィや、トリファスキアータなどは極端に下げすぎないほうが調子が良い(トリファスキアータの場合はpH6.0未満にしない)とされています。

ワイルドベタ、リコリスグラミー

ワイルドベタやリコリスグラミーも、もとはブラックウォーターの水域に生息する種が多いです。

発色していない個体ではただの黒っぽい魚であることが多く、本来の発色を楽しむためにはマジックリーフが欠かせません。

ブラックウォーターでやや暗めにした環境であれば発情した本来の姿を見ることができます。

アロワナ

古代魚の入門魚とされるアロワナもブラックウォーター出身です。最大体長が1mにもなる分、大きな水槽を必要とします。

マジックリーフを使えば、手軽にブラックウォーターのような水質に近づけて、より自然下に近い姿を見せてくれるでしょう。

ビーシュリンプ

ビーシュリンプは弱酸性の水質を好む点に加え、活性を高めて繁殖を促すアイテムとしてマジックリーフが好まれます。

マジックリーフをエサとして“ツマツマする”姿も愛らしいものです。最終的には葉脈だけになるまで食べつくします。

ブラックウォーターにおすすめの水草

ブラックウォーターが効果的な魚種と同じように、落ち葉が堆積するような湿地帯に生える種、または南米のブラックウォーター河川に生育する種から優先して選ぶと良いでしょう。

以下はレイアウトに現地のような雰囲気を演出できる育てやすい水草です。
CO2がなくても比較的丈夫とされています。

マジックリーフの代用になるもの

ブラックウォーターを作り、葉そのものはエサ代わりにもなる。健康を維持してヒレや体色も美しくなり、繁殖のサポートもしてくれる……。マジックリーフは多様なはたらきをしますが、単品で代用品となるものはなかなかないでしょう。
ただし、ブラックウォーターを作るという点では以下のもので代用することもできます。
自然素材に限らず、水質調整剤でもブラックウォーターを作ることは可能です。

ヤシャブシ

ピートモス

水質調整剤 

まとめ

海外ではよく使われているマジックリーフ(別名アンブレラリーフ)。落ち葉が堆積した沼地、あるいはブラックウォーター河川に棲む魚種であれば、マジックリーフの効果てきめんです。
水草もうまく組み合わせて現地のような水景の演出にトライしてみてください。
きっと自然下にいるようなイキイキとした姿を見せてくれることでしょう。

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