水上葉・水中葉ってなに?<水草の環境適応能力>

種類解説(水草)
種類解説(水草)

皆さんこんにちは、Tです。形・色・葉のつき方・背丈……。水草の種類によってその特徴はさまざま。そこに魅せられて水草のコレクションや水草レイアウト水槽を始めたという方も多いのではないでしょうか?星の数ほどある水草ですが、種類によっては陸上でも育成できること、陸上と水中では見た目が大きく違う種類があることをご存じですか?本記事では水草の適応能力の1つについてご紹介します。

厳しい環境に適応するために得た能力

アクアリストの皆さんなら、いつも愛でている水草たち。水草たちは本来であれば、自然の環境で自生しています。日本では田んぼや湖沼などに自生していることもありますが、自生している水草を生で見る機会ってそうそうないですよね。では、彼らはどんな暮らしをしているのでしょうか?

水槽内では、意図的に水で空間を満たしそれを維持させていますよね。しかし、自然界はそうではありません。雨量が少なければ水場の水位は減っていきます。水草が水面から顔を出すこともしばしば。そんな時に水草たちはある変化を起こします。

葉の形状や色を変化させて適応する

水草は、水中の環境に適した葉「水中葉(すいちゅうよう)」から水上の環境に適した「水上葉(すいじょうよう)」へと変化させるのです。このように環境によって葉の形を変化させることを「異形葉性(いけいようせい)」といい、水中・水上の両方に適応できる植物を「水陸両生植物」といいます。

代表種は、ロタラやウォーターバコパ、そしてミリオフィラムの仲間です。

下の写真は、ロタラ ロトンディフォリア ベトナム H’raの水中葉です。強烈な赤色が非常に美しい水草です。

ロタラらしい細葉で、美しいですね。これが水上葉になると…

水草は管理の楽さと輸送でのストレスへの耐えやすさから水上葉で販売されていることも多いです。
水上葉で購入した水草を、水槽へ導入しても良いのでしょうか。

水草の変化は見た目だけ?

水草が環境に合わせて変化させるのは見た目だけなのでしょうか。見た目が変わる事で水草自身に何が来ているのでしょうか?水上葉・水中葉のそれぞれの特徴をあげてみました。

まずは水上葉です。基本的に陸棲植物と同じような構造になります。紫外線や乾燥から身を守るために自身の体を細胞壁で覆います。さらに、紫外線から身を守ったり日光からより多くの栄養を吸収するために葉緑体を増やします。そうすると葉の緑色がより濃く、質感は硬くなります。

水上葉の特徴
・重力や風から身を守るためガッシリとした葉姿になる
・太陽光からより栄養を得るために葉緑体が増加。その結果水中葉より葉が濃い緑色になる

一方で水中葉は地上よりも刺激が少ない水の中に適応します。浮力を受けるので、茎や葉は細く柔らかいです。紫外線も水中では地上ほど強くないため葉の色も薄くなります。

水中葉の特徴
・重力や風がないため柔らかく細くなる
・陸上に比べ強い紫外線を浴びないため、黄緑や赤など鮮やかな色になる

水上葉・水中葉 導入時のメリットとデメリット

チャームでは、水上葉の水草・水中葉の水草の両方を取り扱っています。双方にどんなメリットとデメリットがあるのでしょうか?水槽への導入時の参考になれば幸いです。

水上葉の導入時のメリット・デメリット

メリット
安価である
成長が早い
コケや貝を持ち込みにくい
輸送のダメージを受けにくい

デメリット
レイアウトにすぐに使えない(水中化させる必要がある)
浮力が強く根が張るまでは抜けやすい 
海外からの輸入品は農薬がかかっている

デメリットの「海外からの輸入品は農薬がかかっている」は、チャームの場合は国産なので安心ですね!

水中葉の導入時のメリット・デメリット

メリット
すぐにレイアウトに使える

デメリット
コケや貝を持ち込むことがある
水上葉に比べて高価

水上葉を水槽に導入してもいいの?

結論から言えば、導入して良いです。水上葉の水草を水の張った水槽に植えると、葉が水中の環境に適応しようとして葉の形や色が大きく変わることがあります。水上化している水草をそのまま水中に植える際は、よく洗ってすでに枯れてしまっている葉や黒ずんでいるなどの状態の悪い葉は取り除いてから植えましょう。

ロタラ ロトンディフォリア-ベトナム-H’raの水上葉を水中に入れた様子です。

↓ 育成が進み、水中化すると

水中化が始まり、葉の形や色が大きく変化しています。よく見ると、まだ水中化していない葉も見受けられます。ほぼ水中化していますが「半水中化」と言ったところでしょうか

水上葉を水に入れたら枯れた!

チャームでもよくお問い合わせをいただきます。これは、枯れたのではなく水草が水中化しているサイン。水中葉を展開させるために、水中環境に適応していない水上葉を枯らしているのです。十分な光量とCO2、適切な水温が保てていればそのうち水中に適応した葉が展開されてくるはず。もし、いつまでたっても葉が出てこず、そのまま枯れてしまいそうであれば、水槽内の環境が適していない可能性が極めて高いです。もう一度水槽内の環境を見直してみましょう。

水中葉の展開時に枯れたり溶けたりした葉は、水を汚す原因となりますのですぐに取り除くようにしましょう。

また、チャームでは水中葉の水草を多く取り扱っています。すぐに水草レイアウトに導入したい場合は、水中葉の水草をご購入いただくことをオススメします。

段階を踏んで導入しよう

いままで多くの時間を陸上で過ごしてきた水上葉の水草にとって、急に水中に入れられるのはとても大きな環境の変化。環境の変化に適応できず、そのまま枯れてしまうこともあるようです。そんなことにならないようにこの記事では、水中葉に移行しやすいように事前準備を行うことをオススメします。

具体的な方法としては「ミスト式栽培」を行うこと。

写真では、見やすくなるようにサランラップは外しています。

水草育成用のライトを点灯させます。水草を植える部分にはソイルを敷き、たっぷりと霧吹きをします。水槽の上部をサランラップ等で覆い、高い湿度を保った状態で水上葉を育成させる方法です。こうして段階を踏むことで、水草が水上→半水中化→水中へと移行しやすくなり、失敗の確率が低くなります。ミスト式栽培を行うことで水草がある程度成長、注水する前に根を張ります。注水前に水草が根を張ることで注水後も育ちやすくなると同時に既にある程度ソイルの養分も使用されるので、水槽内が栄養過多にならずコケの発生も抑えられます。

ミスト式栽培にもメリット・デメリットがあります。下の欄を参考にしてみてください。

メリット
換水が不要
CO2添加が不要
藻類の対策が不要
根張りをするので注水した後も育ちやすい

デメリット
温度管理が大変(気温が低い場合)
藍藻・カビが生えやすい
ミスト式に向かない水草もある

ミスト式栽培にオススメの水草

前景草が主で、特に脇芽やランナーを伸ばして成長する水草に向いています。

ニューラージパールグラス
キューバパールグラス
グロッソスティグマ
ヘアーグラスショート
ウォーターローン
コブラグラス

ミスト式栽培を試してみたい方はこれらの水草の水上葉で挑戦してみてはいかがでしょうか?

水上葉と水中葉の違いが美しい水草たち

水上と水中での葉の様子の違いが美しい種をピックアップ!

水上葉

水中葉

グリーンロタラ

ハイグロフィラ ポリスペルマ

ウォーターウィステリア

プロセルピナカ パルストリス キューバ

水上葉を展開できない水草

ここまで水上葉・水中葉の違いを解説してきましたが、水草の中には水上葉を展開できない種類があります。ここで紹介するような水草たちは沈水性水草(ちんすいせいみずくさ)と呼ばれ、水上での管理は不可能なので注意してくださいね。つまり、前述したミスト式栽培には向かない水草ということですね。

バリスネリアの仲間
レイアウトに使用しやく人気があります。一般に光量が多いほど背丈は短くなります。弱酸性から弱アルカリ性までのpHで、多少の硬度を必要とします。新芽が萎縮することが多いため、できるだけ草姿には触れないようにすると、きれいに育てることができます。

カボンバ
フサフサとした繊細な葉がきれいで金魚藻として有名な水草です。金魚のおやつや水質浄化、鑑賞用などの目的でよく用いられます。一度は見たことがあるのではないでしょうか?

アナカリス
カボンバと並んで有名な水草です。透明感のある緑が美しく、凍結しなければ冬にヒーターがなくても枯れない強健な種類なので、ビオトープにも適しています。

意外にも水上化する水草

この水草、水上化するの!?実はするんです。

モスの仲間
アクアリウムでの「自然感」「ネイチャー感」の演出に欠かせないモス。このモスも、水上化します。栽培方法は主に、前述したミスト式。石や流木に活着させてからミスト式栽培を行うと水中で育成するよりも早い速度で成長してくれます。

シダの仲間
こちらは少しイメージしやすいかもしれませんね。ミクロソリウムなどのシダの仲間は水上化することができます。栽培する際は、高い湿度を保つようにしましょう。

エキノドルスの仲間
センタープラントとして、水槽にアクセントを加えたい時などに活躍するエキノドルス。多様な改良品種が作出されており、カラーバリエーション・葉の形状は品種により多岐に渡ります。

水上葉の方が育てやすい水草

次は、水上葉の方が育成しやすい種類をご紹介。こちらはアクアテラリウムや、ビオトープなどで活躍する水草たちです。

ヤマサキカズラ
パプアニューギニア原産のサトイモ科の植物です。水上は葉の長さは30cm、幅は10cmにもなります。ビオトープなどで日陰を作るなど、その大きさを活かしたレイアウトにするとよいでしょう。

ジャワファン
ウラボシ科(Polypodiaceae)ヘツカシダ属(Bolbitis)の植物で、三枚葉の水性シダです。
テラリウムにも向いており、中~後景としてレイアウトすると良いでしょう。石や流木などに活着しながら成長するため、レイアウトする際はソイルに直接埋め込まず、活着できる土台にビニタイ等で固定してから入れましょう。

リシマキア
リシマキアの仲間はガーデニングでもよく知られる植物です、種類や品種によっては水中化して水草としても使われます。水草として使われる種も園芸で使われる種もどちらも水上の方が元気よく育ちます。

左が水草によく用いられる種。右が園芸によく用いられる種。

水上葉ならあなたのお庭でも楽めることができます!また、ビバリウムやテラリウム・高さの低いフラット水槽を使ったレイアウトのアクセントとしても活躍することでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?今回は、水草の水上葉・水中葉についてお話しました。水草の見方や可能性が広がったのではないでしょうか?水草の個性を利用して、あなただけの水草レイアウトに挑戦!

最後までお読みいただきありがとうございました。

投稿者
T

1997年10月8日生まれ。愛知県出身。アクアリウムは初心者で、ビギナーの心に寄り添った記事を目指しています。自宅でフトアゴヒゲトカゲを飼育(8歳)趣味のオートバイはかれこれ6年目に突入。

ティーよりコーヒーが好き。

Tをフォローする
Tをフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました