熱帯魚がかかる厄介な病気、尾腐れ病。
ここではその治療に有効な魚病薬と、その基本的な使い方について解説します。
尾腐れ病とは
名前の通りヒレが腐ったように溶けていく病気です。
カラムナリス菌(Flavobacterium columnare)の感染により発症する、細菌性感染症です。
初期症状はヒレの先端が白く濁り、周囲が赤く充血します。
やがて病状が進行するとヒレがどんどんと溶けていきます。
重症化するとヒレの一部だけをパサパサと残すのみになり、ヒレの付け根まで達することもあります。
ここまで酷く病状が進行してしまうと、助かる見込みは薄いです。
進行が早く、発見が遅れると治療が困難な病気です。
有効な魚病薬
尾腐れ病に有効な魚病薬は次の通りです。
基本的には成分に抗菌剤と呼ばれる、「フラン剤(ニトロフラゾン、ニフルスチレン酸ナトリウム)」を含んだ魚病薬を使用しましょう。
色素剤系も効くものの、抗菌剤に比べると薬効は弱いです。
進行が速いうえに重症化すると治療は難しく、かかってしまうとあまり予後の良くない病気です。
最善を尽くしたとしても、最終的には病魚が本来持っていた体力勝負になることも多々あります。
製品名 | エルバージュエース | グリーンF ゴールド顆粒 | メチレンブルー | グリーンF リキッド | アグテン | グリーンF |
---|---|---|---|---|---|---|
薬効 | ★★★ | ★★☆ | ★☆☆ | ★☆☆ | ★☆☆ | ★★☆ |
着色 | 無 (飼育水は着色) | 無 (飼育水は着色) | 有 | 有 | 有 | 有 |
性状 | 粉末 | 粉末 | 液体 | 液体 | 液体 | 粉末 |
有効成分 | ニフルスチレン酸ナトリウム | ニトロフラゾン スルファメラジンナトリウム | メチレンブルー | メチレンブルー | マラカイトグリーン | ニトロフラゾン メチレンブルー |
水草水槽 での使用 | 不可 | 不可 | 不可 | 不可 | 可 | 不可 |
備考 | 即効性が高い | 薬効期間が長い 負担が緩やか | 色素剤は薬効低 | 色素剤は薬効低 | 色素剤は薬効低 | 白点病、水カビ病との併発時に有効 |
※メリットとなりうる要素は青く着色しています。
- 薬効:基本的に抗菌剤が有効です。
色素剤も一定の有効性はあるものの、抗菌剤に比べると薬効は弱いです。 - 着色:抗菌剤は飼育水を黄色く着色しますが、シリコンやエアーチューブはほとんど着色されません。色素剤は青く着色します。
- 性状:基本的に液体のほうが扱いやすいです。
しかし、尾腐れ病に対して薬効の高い魚病薬は全て粉末です。 - 有効成分:ニフルスチレン酸ナトリウム、ニトロフラゾンが特に有効です。
- 水草水槽での使用:尾腐れ病に効果のある魚病薬のうち、水草を入れたまま使えるのはアグテンのみです。しかし、アグテンは色素剤なので薬効は高くありません。
- 尾腐れ病の治療は長期化することも多いです。
治療の途中で魚の体力が尽きてしまうことも、しばしばあります。
各魚病薬の使い方
薬品ごとの詳しい使い方は、以下の動画をご覧ください。
実際の水槽への使用例を、1~2分程度の短い動画でわかりやすく紹介しています。
※実際に薬浴させる場合は、商品に添付されている説明書をよくお読みの上ご使用ください。
エルバージュエース
尾腐れ病の治療薬としては最も有名な魚病薬です。
魚体への吸収が良く、即効性が高いのが特徴です。
一方で薬効期間が短く、魚への負担が大きいのは留意点です。
魚に十分な体力があるうちに使用するのがおすすめです。
グリーンFゴールド顆粒
エルバージュエースに比較すると魚への負担が少なく、薬効期間が長いのが特徴です。
魚の導入直後や体力が落ちているときはこちらがおすすめです。
薬効範囲となる症状もエルバージュエースより広く、尾腐れ症状や皮膚炎の他にも鱗の剥離やびらん(粘膜のただれ)にも効果があります。
メチレンブルー
白点病の治療薬としては最も有名な魚病薬です。
尾腐れ病に対しても一定の効果はありますが、抗菌剤に比べると薬効は弱いです。
グリーンFリキッド
メチレンブルーの効能に加え、スレなどの物理的な外傷への消毒効果のあるアクリノールが配合されています。
色素剤なので尾腐れ病に対する薬効は高くありません。
しかしスレ傷へのトリートメントに使えるので、1本持っておくとトリートメントの際に便利です。
アグテン
水草水槽でも使用でき、白点病に関してはメチレンブルーに比べ薬効の強さが特徴の魚病薬です。
尾腐れ病に関しては、抗菌剤に比べると薬効は弱いです。
薬効期間が短い点は留意しておきましょう。
グリーンF
メチレンブルーの効能に加え、細菌性感染症にも効果のある魚病薬です。
尾腐れ病の他に白点病や水カビ病を併発している場合特に有効です。
そのような状況から回復できる可能性が最も高い魚病薬は、このグリーンFです。
しかし尾腐れ病を発症している時点で予後が悪いことが多く、そこに白点病や水カビ病も併発している状態となると、治療は困難を極めます。
薬浴時にあると便利なもの
トリートメント水槽
病魚を隔離して治療する場合に便利です。
魚を隔離しての薬浴は個体単位で見れば有効ですが、水槽全体で見ると問題解決には至っていないことがある点に留意しておきましょう。
使い捨て手袋
薬液が手につくと、着色して取れなくなることがあります。
使い捨てのポリ手袋は対策としておすすめです。
ゴーグル
薬品、薬液から目を守ります。
不意に飛び散った薬液が目に入ると危険なため、装備しておくと安心です。
手付きビーカー
粉末タイプの薬品を溶かしたり、計量する際に何かと便利です。
普段の水換えにも活躍します。
ベロペット
粉末タイプの薬品を溶かした際、水槽に計量しながら入れるのに便利です。
普段の給餌にも活躍します。
再発に備えよう
原因菌であるカラムナリス菌は常在菌のため、魚の体力が落ちているときは治療が終わっても再発することがあります。
また、ヒレをケンカでかじられたり、痛めてしまったところから感染することもあります。
エンゼルフィッシュやベタ、ロングフィン系の改良品種全般、金魚など、「ヒレの長い魚」は特に注意が必要です。
尾腐れ病は進行の速い病気なので、対処が遅れやすく手遅れになりがちです。
発見次第いつでも対処できるように、薬は常備しておきましょう。
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