ブラックモーリーの飼い方<熱帯魚解説>

コケ取り生体
コケ取り生体プラティ・卵胎生メダカ種類解説(熱帯魚)

どうも、ほにゃらら sp.です。

今回ご紹介するのはブラックモーリー。
全身真っ黒に染まる、卵胎生メダカの一種です。

漆黒の体は存在感があり、水草にも非常に映える美しい魚です。

飼育しやすい熱帯魚として古くから人気の種ですが、実は水草レイアウト水槽のメンテナンスフィッシュとしても有用な一面を持つことでも知られています。

今回は魚種の基本情報だけでなく、メンテナンスフィッシュとしての側面もピックアップしながら紹介していきます。

ブラックモーリーとは

生物学的情報
名前ブラック・モーリー
学名Poecilia sphenops×Poecilia latipinna×Poecilia velifera
分類カダヤシ目ポエキリア科
食性雑食(草食傾向)
分布改良品種
(原種:メキシコ)
飼育要件
飼育しやすさ★★★★★
とても容易
入手しやすさ★★★★★
よく見かける
混泳しやすさ★★★★★
とても混泳向き
最大体長6cm程度
適正水温23~27℃
pH生存可能:6.0~8.0
適正範囲:7.0~7.5
備考導入時状態を崩しやすいので注意

ブラックモーリーは全身漆黒の体色が特徴の卵胎生メダカです。
全身が真っ黒であり、卵胎生メダカとしてはそこそこ大きく育つので、特に混泳水槽やレイアウト水槽では、他の熱帯魚を引き立てる役割として古くから重宝されています。

プラティやソードテールといった他の卵胎生メダカ類同様、非常に強健です。
繁殖もペアがいればいつの間にか殖えているほど容易で、他種に比べやや大きめの稚魚を生みます。

流通量も多く入手しやすく、何でもよく食べます。
初めてでも飼育しやすい熱帯魚です。

メンテナンスフィッシュとしての有用性

ブラックモーリーは飼育しやすく、漆黒の体色で人気があるのもさることながら、実はレイアウト水槽のメンテナンスフィッシュとしても有用な一面があります。

具体的には、糸状の藻類(アオミドロなど)藍藻類油膜の除去といった役割を果たしてくれます。

糸状藻類(アオミドロ)
藍藻類(シアノバクテリア)
油膜

このような性質を持つメンテナンスフィッシュは他魚種にはあまりいません。
しかも入手しやすく丈夫なうえ、ある程度のサイズがある(=1匹あたりの処理能力が高い)のはブラックモーリーだけです。

このため、ブラックモーリーが最適となる場面は多いでしょう。

ただし、ブラックモーリーはこれらを好んで食べるわけではないようです。
エサが足りない時に食べるようなので、クリーナーフィッシュとして採用する場合は給餌量を調整する必要があります。

数を入れればある程度きれいにしてくれる効果は見込めますが、過度な期待は禁物です。

糸状藻類対策

糸状藻類(アオミドロ)

エビ類よりは劣りますが、そこそこ食べてくれます。
糸状藻類を専門に駆除したいのであればエビ類のほうが有効です。

本種は後述する藍藻類、油膜類も同時に対策できることが重要なポイントです。

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対藍藻(シアノバクテリア)対策

藍藻類(シアノバクテリア)

これを摂食する生体は非常に少ないです。
流通量が多く、入手しやすい種となるとブラックモーリーぐらいとなるでしょう。

ただし、あまりにはびこっていると駆除は難しいです。
まず手作業で駆除を行った後、どうしても出てしまう残った部分を掃除させると有効です。

藍藻対策として導入する場合は、給餌量はかなり控えめにします。

油膜対策

油膜

生体で油膜対策を行う場合は、トップクラスの優秀さです!

油膜は卵胎生メダカの仲間であれば、多くの種が食べてくれます。
その中でブラックモーリーが優れている点は、「比較的流通が多く、入手しやすい種の中では最大」という点です。

グッピーやプラティでも一応、同様の効果は見込めます。
それでもやはり、1匹あたりの処理能力が高いのがブラックモーリーの良さでしょう。


低pH・軟水環境は実は苦手・・・

ブラックモーリーは水草レイアウト水槽においてメンテナンスフィッシュとして大変有用です。
幅広い水質に適応できますが、実は弱酸性の軟水はどちらかと言えば苦手です。

pH6.5くらいまでなら特に問題なく飼育できますが、6.0未満ともなるとだんだん痩せて調子を崩すことがあります。

本来は弱アルカリ性の硬水寄りの水質を好む魚種であることに、留意しておきましょう。


害虫対策にも有効

特にオープンスタイルのレイアウト水槽において、ミズメイガやアブラムシといった不快害虫の駆除にも有効です。

オープンスタイルではこれらの害虫が意図せず繁殖してしまうことがあり、水面より上に飛び出した葉などに多くつきます。

ブラックモーリーは水面付近のエサを積極的に食べてくれるため、水面に落ちた害虫は駆除してくれます。

水面より高い位置にいる害虫は食べられないので、虫のついてしまった水草は一度水没させると、喜んで食べてくれます。

ミズメイガ

実は複雑な分類

ブラックモーリーは古くから知られる熱帯魚ですが、その分類は実は複雑です。

単に突然変異で生じた黒化型を固定したものではないらしく、「Poecilia sphenops」「Poecilia latipinna」「Poecilia velifera」3種の交雑種といわれています。

Poecilia sphenopsは原種モーリーです。
和名では「コクチモーリー」という名で知られ、メキシコ原産ですが日本にも一部地域で定着例が知られている種です。
ブラックモーリーの基本的な体型は本種に由来するものと考えられます。

Poecilia latipinnaはいわゆるセルフィンモーリーです。
原種モーリーに比べると背ビレが大きく、シルエットは全く異なります。

Poecilia veliferaはベリフェラ、ユカタンモーリー、またはジャイアントセルフィンモーリーと呼ばれる種です。

しばしばセルフィンモーリーと混同されることも多いですが、こちらのほうが大型化する傾向があるようです。

ジャイアントセルフィンモーリー原種
(ベリフェラ)

流通するモーリー類はこれら3種の交雑で、このうちブラックモーリーはPoecilia sphenopsの形質が色濃く現れたものということになるのでしょう。


いろいろなバリエーション

ブラックモーリーをはじめ、モーリー類は上述の3種ミックスで作出された改良品種です。
体型や色のバリエーションは豊富で、さまざまなタイプが流通しています。

ここではブラックモーリーに準じた、黒系の体色を持つ品種を紹介します。

ブラックライヤーテールモーリー

ブラックモーリーの尾ビレをライヤーテールにした改良品種です。

体型はそのままですが尾の形状が変化したことで、存在感がややアップしました。

メンテンナンスフィッシュとしての役割も、ブラックモーリー同様に果たしてくれます。

ブラックモーリー同様流通が多く、比較的見かけやすい品種です。
お好みで選ぶと良いでしょう。

ブラックセルフィンモーリー

ブラックモーリーの背ビレがセルフィンタイプになった改良品種です。

こちらはlatipinnaveliferaの表現が色濃く現れたタイプを固定化したものと思われます。

ブラックモーリーの血も濃いためか、他の体色のセルフィンモーリーに比べ、体形がややスレンダーになる傾向があるといわれています。

流通量はあまり多くありません。

ブラックバルーンモーリー

ブラックモーリーのバルーンタイプです。
真っ黒な体色にコロコロした丸い体形は、どこか独特な愛嬌があります。

観賞魚としては個性的で魅力的ですが、体形が寸詰まりなのでやや泳ぎが苦手である点に留意しておきましょう。

こちらもブラックモーリー同様、メンテナンスフィッシュとしての適性もあります。
しかし、メンテナンスフィッシュとしての働きぶりを強く求める場合は、通常のブラックモーリーのほうが良いかもしれません。


有用なアイテム

ブラックモーリーの飼育に関しては、ごく基本的な熱帯魚といったところでしょう。
水質にもさほど敏感でなく、環境適応能力の高い魚です。
水槽サイズも30~60cm水槽で十分、終生飼育が可能です。

おすすめの組み合わせは次の通りです。

水槽フィルター底床
30~60cm外掛け、上部、外部大磯砂、砂、砂利人工飼料(顆粒、フレーク)

どちらかと言えば弱アルカリ性に傾いた水質を好みます。
このため大磯砂が最適です。

環境適応力が高いので、ソイルでも飼育は可能です。
水草レイアウト水槽に導入する場合、ブラックモーリーが水草の要求に合わせられます。

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混泳について

体長が同程度で、中性付近の水質で飼育できる温和な種が混泳に適します。
小型のコリドラスやオトシンクルスは特に問題なく混泳できます。

小型テトラやラスボラといった群れを作るタイプの小型魚との混泳も問題ありません。
群れを作らず単独で暮らす個体の場合、ブラックモーリーより体格が小さいとちょっかいを出されることはあります。

卵胎生メダカなので比較的温和ですが、グッピーなどに比べると気が荒い個体も見られます。
中には、同種間でケンカをする個体もいます。

ただし、ケンカといっても小競り合い程度で済むことが多いです。
それほど大きな問題になることはあまりありません。

もし、ひどく追い回される場合は、隠れ家となる水草などを多めに入れておくと良いでしょう。

グッピーやプラティなど、他の卵胎生メダカと混泳させる場合は感染症を持ち込みやすいです。
どちらかが“キャリア”になっていることも多いので、混泳させる場合は念入りなトリートメントを経てからの混泳をおすすめします。

混泳相手混泳相性備考
グッピー
感染症を持ち込みやすいので注意しましょう。
プラティ・卵胎生メダカ
感染症を持ち込みやすいので注意しましょう。
カラシン・小型テトラ
テトラ類は弱酸性を好みます。
コイ・ラスボラ
トラブルが起こりにくく、相性は良いです。
ローチ・ボーシャ・タニノボリ
ローチ、タニノボリ系は好相性です。
ボーシャ系の攻撃性を持つ種では注意が必要です。
フライングフォックス/アルジイーター
ドワーフシクリッド
サイズ差に注意
アフリカンシクリッド
×
エンゼルフィッシュ
サイズ差に注意
ディスカス
サイズ差に注意
ベタ・グラミー・アナバス
コリドラス
オトシンクルス・ロリカリア
プレコ
レインボーフィッシュ
ハゼ・ゴビー
フグ・パファー
×
エビ・ビーシュリンプ
稚エビは食べられる可能性があります。
ブラックモーリーの混泳相性表
※混泳相手の種や性格によっては、例外もあります。
◎・・・混泳に適した組み合わせです。
〇・・・混泳は可能ですが、種や個体の性格によっては工夫が必要な場合もあります。
△・・・混泳は不可能ではありませんが、適しているとはいえません。工夫次第で可能になる場合もあります。
×・・・混泳には適さない組み合わせです。

繁殖について

本種をはじめとした卵胎生メダカは、繁殖が容易です。
グッピーと同様に卵ではなく稚魚を生む卵胎生であり、ペアがそろっていればいつの間にか稚魚が生まれていることがよくあります。

オスは尻ビレが細長くなっていて交接器(ゴノポディウム)として機能します。
交尾をして1カ月ほどたち、メスのお腹が膨れてきたら出産が近いです。
初産のときは産仔数が少なめですが、出産の回数を重ねると多くの仔を産みます。

大きなメスほど産仔数も多い傾向にあります。
1度の交尾でメスは数回子供を生むことができます。
出産直後や、生まれたばかりの小さな稚魚は、親魚に食べられてしまうことがあります。
これを防ぐには産卵ケースを使用したり、水草を多めに植え込んでやることが必要です。

出産が近くなったメスは動きがせわしくなったり、水槽の下のほうでボーっとしたりといった行動が目立ってきます。
普段と違った行動が目に付くようになったら、産卵ケースなどに入れて出産に備えると良いでしょう。

生まれた稚魚はグッピーの稚魚よりも大きく、細かくすり潰した人工飼料もすぐに食べられます。
成長速度を優先する場合は、ブラインシュリンプ幼生をふ化させて与えるのが理想的です。

餌の与えすぎによる水質の悪化、少なすぎによる痩せに注意して、少量の餌を1日に数度与えます。
1カ月程度でオス、メスの区別がつくようになり、生後2~3カ月程度で繁殖可能となります。

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病気について

飼育環境に慣れてしまえば極めて強健な魚種です。

しかし、プラティやモーリーの仲間は細菌性感染症を患いやすく、輸入直後や水質が変わった際に調子を崩しやすい傾向があります。

対策として、濃い目の塩水浴が有効です。
一般的には0.5%で行いますが、卵胎生メダカの仲間は全般的に塩分への耐性が他魚種よりもやや強いので、0.7%くらいまで引き上げても大丈夫です。(1Lにつき塩約7g)
塩分は高いほうがその分効果も強いです。

塩水浴などでトリートメントを行ってから導入することで、病気の持ち込みといったトラブルが発生しにくくなります。

本種の他に卵胎生メダカの仲間が入っている水槽に導入する場合は、抗菌剤系の魚病薬を用い、薬浴してから導入したほうが良いでしょう。

▼こちらも参考


ブラックモーリー まとめ

ブラックモーリー。

古くから親しまれる、全身真っ黒な熱帯魚です。

他の魚の引き立て役もさることながら、他の生体では除去しにくい藻類を多少なりとも食べてくれるので、細部のメンテナンスに重宝する魚です。

特に、藍藻(シアノバクテリア)と油膜対策ができる点で水草レイアウト水槽への導入価値の高い魚といえます。
本来は弱アルカリに傾いた水質を好む魚種ですが、適応力が高いので弱酸性の水質でも飼育は可能です。

一度飼育環境に慣れれば、極めて強健で飼育しやすい魚種です。
一方、購入してすぐは何かと状態を崩しやすいので、トリートメントを行ってから導入することでこのリスクを軽減できます。

混泳に関しては、本種と遊泳層がかぶり、本種より小さく単独生活を行う魚に多少のちょっかいをかけることがあります。

群れを作るタイプの小型魚や、低層魚など遊泳層の異なる魚に対しトラブルを起こすことはほとんどありません。
水草水槽では主役となりうる、テトラやラスボラ類を良く引き立ててくれます。

本種以外の卵胎生メダカと混泳させる場合にはちょっと注意が必要で、細菌性感染症を持ち込むことが多い点に留意します。
できれば、抗菌剤を用いた薬浴でトリートメントを行い、その後追加したほうがリスクが抑えられるでしょう。

まるで舞台裏の黒子のような働きぶりを見せてくれるブラックモーリー。
藍藻や油膜にお困りの方は、ぜひ導入してみてくださいね。

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投稿者
ほにゃらら sp.

福島県産のワイルド個体。
ロカリティの詳細は残念ながら記録がない模様。
アクアリウム歴はだいたい20年くらい。
「同属内で多様なバリエーション」が好き。若干コレクター気味。
つまりコリドラスや、ミクロソリウムが最高。ということですね。

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