こんにちは、スズキです。
今回取り上げるのは、アフリカ河川産のドワーフシクリッドの一種、
ニコルシー・エジプシャンマウスブリーダー。
アピストグラマのような色彩、“黄金のマスク”を思わせる表情が印象的です。
中性の水質を好むため飼育しやすく、「マウスブルーダー」と呼ばれる独特の繁殖形態の入門種として最適といわれています。そんな本種について特徴を見ていきましょう。
ニコルシー・エジプシャンマウスブリーダーとは


生物学的情報 | |
---|---|
名前 | ニコルシー・エジプシャンマウスブリーダー |
学名 | Pseudocrenilabrus nicholsi |
別名 | ニコルスマウスブルーダー シュードクレニラブルス・ニコルシー |
分類 | スズキ目シクリッド科 |
食性 | 雑食 |
分布 | コンゴ ― コンゴ川 |
飼育要件 | |
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飼育しやすさ | ★★★★ まずまず容易 |
入手しやすさ | ★★★★ まずまず見かける |
混泳しやすさ | ★ 混泳に不向き |
最大体長 | 7cm程度 |
適正水温 | 23~26℃ |
pH | 6.0~8.0 |
備考 | 特になし |
中央アフリカ・コンゴ川原産のエジプシャンマウスブリーダーの仲間です。南米産のアピストグラマのような色彩で、エジプシャンマウスブリーダーの中でも特に美しさを誇ります。中性付近の水質を好み、エサは何でもよく食べるとあって飼育は容易です。
各ヒレ、体色ともに赤と青の色彩が美しく、背ビレの黒い縁取りが特徴的。ブルーリップ・エジプシャンマウスブリーダーとよく似ていますが、本種は黒い縁取りが多いことで区別できます。このように色彩が派手なのはオスで、メスは地味な見た目をしています。繁殖は容易ですがオスは気が荒く、メスが追いかけられやすいので、水草やシェルターによる隠れ家を用意すると良いでしょう。
名前のとおり、「マウスブルーダー」という独特の繁殖形態を持ちます。シクリッドによく見られる特徴で、卵を口にくわえてふ化した稚魚を口で育てます。
エジプシャンマウスブリーダーの仲間
メタリックの輝きが美しいエジプシャンマウスブリーダーの仲間をご紹介しましょう。
いずれもマウスブルーダーの繁殖入門種とされ、飼育・繁殖ともに容易です。
ブルーリップ・エジプシャンマウスブリーダー

Pseudocrenilabrus philander
Pseudocrenilabrus philander dispersus
最大体長:10cm
青い唇が特徴的なアフリカ南部に広く生息するシクリッドです。第2のエジプシャンマウスブリーダーとして紹介されました。産地によっていくつかのタイプが知られるようですが、多くはヨーロッパやドイツでブリードされたものが流通します。
本来は地味な体色を持つ種ですが、全身が金色に輝き、背ビレのオレンジの発色が強いタイプです。
ドワーフ・エジプシャンマウスブリーダー

Pseudocrenilabrus multicolor
最大体長:7cm
アフリカ北東部、ナイル川原産のシクリッドで古くからマウスブルーダー繁殖入門種として愛好されてきました。ヒレに複雑な色を見せますが、他のエジプシャンマウスブリーダーと比較すると落ち着いた美しさといえるでしょう。
有用なアイテム
ニコルシー・エジプシャンマウスブリーダーの飼育は、熱帯魚飼育の基本を押さえていれば、比較的容易です。一般的にアフリカンシクリッドというと弱アルカリ性の水質を好むとされますが、河川産である本種は中性付近を好みます。
複数匹での飼育、あるいは繁殖を考えているなら水槽サイズは最低でも60cm水槽での飼育がオススメです。
おすすめの組み合わせは次の通りです。
水槽 | フィルター | 底床 | 餌 |
---|---|---|---|
60cm | 外掛け、上部、外部 | 大磯砂、砂、砂利 | 人工飼料、生餌 |
多少底砂を食むので、底砂を敷かないベアタンクよりは、薄くても良いので底砂を敷いてあげたほうが良いです。特に繁殖を狙う場合は、魚がしっかり落ち着けるよう底砂は必ず敷くと良いでしょう。
中性付近の水質を好む性質から、中性を維持しやすい底床(大磯砂、田砂)を選ぶと良いです。
扱いやすさでは大磯砂ですが、アルカリ性に傾ける作用がある点に留意してください。

エサは生餌でも人工飼料でもなんでもよく食べます。
稚魚も最初からブラインシュリンプや人工飼料を食べることができ、管理しやすいです。
オススメの水草
ニコルシー・エジプシャンマウスブリーダーの水槽には、丈夫で育てやすい水草でおなじみのアヌビアスがオススメ。本種と同じアフリカ原産の水草です。流木付きはメンテナンスが楽なうえにケンカの防止にも役立ちます。
流木付き アヌビアス
繁殖について
ニコルシー・エジプシャンマウスブリーダーの繁殖力は非常に強いため、繁殖は容易です。シクリッドによく見られる「マウスブルーダー」と呼ばれる特徴的な繁殖形態を持ち、メスが卵をくわえ、ふ化した稚魚を口の中で育てます。
ペアで入手した場合は、性成熟を迎えると自然とペアを形成し繁殖に至ることが多いです。オスメスどちらかの性成熟が足りなかったりすると、攻撃されたりケンカしたりすることもあります。
その場合は十分な隠れ家を用意するか、隔離してあげてください。十分に養生したら再度同じ水槽でペアで飼育してみてください。
幼魚や若魚でオスメス判別できない場合は、複数匹で飼育しながら性成熟するまで育てましょう。
サイズ差によるケンカなどに多少ケアが必要ですが、自然とペアを形成したもの同士で産卵し、いつの間にかメスが卵をくわえていることが多いです。
産卵行動はオスが主張した縄張りで行われますが、産卵行動に備えてシェルターや流木などを多めに入れておきます。卵をくわえているメスは隔離し、稚魚がふ化して自由遊泳し始めたらメスの親魚を取り出すと良いでしょう。
動画あり。マウスブルーダーについて詳しくはコチラ
混泳について
他のシクリッドと同様に、ニコルシー・エジプシャンマウスブリーダーも気が荒いです。一般的にシクリッドの混泳は同種同士で行うと良いとされていますが、繁殖を楽しむなら単独飼育か遊泳域の重ならない魚種との混泳が良いでしょう。エジプシャンマウスブリーダーの仲間は中性に近い水質を好むため、弱アルカリ性を好むアフリカンシクリッドとの混泳は避けたほうが良いでしょう。
縄張り意識が強いため、過密飼育をすることで攻撃の対象が分散されてケンカを和らげます。なるべく5匹程度から飼育するのが理想です。なお、隠れ家を十分に用意してください。
混泳相手 | 混泳相性 | 備考 |
---|---|---|
グッピー![]() | × | 本種が攻撃性を示すため、混泳は不可能と考えたほうが良いでしょう。 |
プラティ・卵胎生メダカ![]() | × | 本種が攻撃性を示すため、混泳は不可能と考えたほうが良いでしょう。 |
カラシン・小型テトラ![]() | × | 本種が攻撃性を示すため、混泳は不可能と考えたほうが良いでしょう。 (カラシンが)中型以上のサイズであること、十分なスペースがあること、匹数のバランスが良いの条件を満たせば混泳できる場合もあります。 |
コイ・ラスボラ![]() | × | 本種が攻撃性を示すため、混泳は不可能と考えたほうが良いでしょう。 (コイの仲間)が中型以上のサイズであること、十分なスペースがあること、匹数のバランスが良いの条件を満たせば混泳できる場合もあります。 |
ローチ・ボーシャ・タニノボリ![]() | × | 本種が攻撃性を示すため、混泳は不可能と考えたほうが良いでしょう。 |
フライングフォックス/アルジイーター![]() | △ | 本種から攻撃を受けることがありますが、十分なスペースがあれば混泳は可能です。 |
ドワーフシクリッド![]() | × | 本種が攻撃性を示すため、混泳は不可能と考えたほうが良いでしょう。 |
アフリカンシクリッド![]() | △ | 十分なスペースのある水槽なら同じ中性を好むアフリカ河川産シクリッドの仲間なら混泳可能です。三大湖産のような弱アルカリ性を好む種は混泳不可。 |
エンゼルフィッシュ![]() | × | 本種が攻撃性を示すため、混泳は不可能と考えたほうが良いでしょう。 |
ディスカス![]() | × | 本種が攻撃性を示すため、混泳は不可能と考えたほうが良いでしょう。 |
ベタ・グラミー・アナバス![]() | × | 本種が攻撃性を示すため、混泳は不可能と考えたほうが良いでしょう。 |
コリドラス![]() | × | 本種が攻撃性を示すため、混泳は不可能と考えたほうが良いでしょう。 |
オトシンクルス・ロリカリア![]() | × | 本種が攻撃性を示すため、混泳は不可能と考えたほうが良いでしょう。 |
プレコ![]() | △ | セルフィンプレコなどの大型種であれば混泳可能です。 ミニブッシーやタイガープレコなどの小型種に対しては、 本種が攻撃性を示すため、混泳は不可能と考えたほうが良いでしょう。 |
レインボーフィッシュ![]() | × | 本種が攻撃性を示すため、混泳は不可能と考えたほうが良いでしょう。 |
ハゼ・ゴビー![]() | × | 本種が攻撃性を示すため、混泳は不可能と考えたほうが良いでしょう。 |
フグ・パファー![]() | × | 本種が攻撃性を示すため、混泳は不可能と考えたほうが良いでしょう。 |
エビ・ビーシュリンプ![]() | × | 本種が攻撃性を示すため、混泳は不可能と考えたほうが良いでしょう。 |
※混泳相手の種や性格によっては、例外もあります。
◎・・・混泳に適した組み合わせです。
〇・・・混泳は可能ですが、種や個体の性格によっては工夫が必要な場合もあります。
△・・・混泳は不可能ではありませんが、適しているとはいえません。工夫次第で可能になる場合もあります。
×・・・混泳には適さない組み合わせです。
ニコルシー・エジプシャンマウスブリーダーまとめ

アピストグラマのような色彩を持つ美しいアフリカ河川産のシクリッド、ニコルシー・エジプシャンマウスブリーダー。
中性に近い水質を好み、飼育も容易とあってユニークな繁殖形態であるマウスブルーダーの入門種として最適です。
混泳には気を使いますが、
・シクリッドの中では小型で小さな水槽でも繁殖が楽しめる
・レイアウトを大きく崩すさないため水草水槽でも飼育を楽しめる
これらは飼育する上で魅力的といえるでしょう。
観賞から繁殖まで気軽に楽しめるニコルシー・エジプシャンマウスブリーダーの飼育にぜひ取り組んではいかがでしょうか。
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