よく名前が挙げられる熱帯魚のひとつがエンゼルフィッシュ。人気が高く、改良品種も多く流通しています。今回はそんなエンゼルフィッシュの繁殖(ブリード)や稚魚育成についてご紹介していきます。
エンゼルフィッシュとは
学名:Pterorhyllum scalare
原種はペルー・コロンビア・ブラジルのアマゾン川の流域に生息します。
産地によって体色や模様にバリエーションがあり、コレクション性も高い種です。
1930年ごろに初めて日本に輸入され以降、多くのブリーダーさんのたゆまぬ努力により改良品種が作出されました。その中でも多く流通しているのは「スカラレ種」のようです。
1850年代にロンドンで開かれた博覧会から一般に普及し、見た目の美しさから万人に受け入れられたようです。アクアリウム全盛期はエンゼルフィッシュも貴重な種で高額で取引されていました。
また、エンゼルフィッシュが普及した頃から熱帯魚飼育に必要な用品が作られたとされています。エンゼルフィッシュがアクアリウムを発展させるきっかけになったともいえるかもしれません。
雌雄判別について
エンゼルフィッシュの雌雄判別は困難で、販売されている若魚サイズではほぼ判別はできません。
飼育し成熟したエンゼルフィッシュであれば、「生殖器」「フォルムの違い」で判別できるようになります。
生殖器
成熟した個体のエラ下からでたヒレの後ろ、肛門付近に発情すると生殖器が出てきます。
オス:尖った三角形のような形
(先端に向かってとがり細い)
メス:筒状の四角形の形
(付け根から先まで変わらず管のように太い)
常に出ているわけではなく、発情していないと確認できません。
若い個体はメスがいなくても発情しますが、成熟しきった個体はメスがいないと発情しないことがあります。
成熟個体で生殖器が確認できれば判別は可能です。フォムルのみでの判別は100%まではいかず、個体によっては判別するのが難しくなります。
頭部(フォルム)の違い
オス:頭部(おでこ?)のあたりから口元にかけて大きく膨らみがでる。
メス:オスに比べ膨らみがなく滑らか。
※へこんでいるように見える個体もいるようです。
繁殖について
繁殖方法などディスカスに類似する点が多くあります。下記の記事「ディスカス」の中に詳しく説明してあります。こちらの記事も参考にしてください。
ペアリング方法
雌雄判別でも説明したように、エンゼルフィッシュはオスメスの判別が困難です。4~5匹の若魚から飼育を行い、水槽内で自然と形成されたペアを得るのが一般的です。
4~5匹の若魚から飼育して成長することを考えると、ある程度の飼育スペースが必要になりますので、飼育水槽も大きいサイズを準備してあげましょう。
繁殖できるようになると水槽内でも、上記のような求愛行動が見られるようになります。
ペアが形成されると、仲良くいつも寄り添って泳ぐようになります。同時に、縄張り意識が強くなり、ペア以外の魚に対して攻撃的になります。
90cm水槽以上の十分なスペースのある水槽であればそのまま繁殖させても問題はありません。
水槽が狭い場合や他の魚への攻撃が激しい場合は、魚を移動させたり、セパレーターを用意してあげると効果的です。
※ペアを他の水槽に移動させるより、ペア以外の魚を移動させた方が良いです。環境が変わるとペアが分かれたり、繁殖行動をやめてしまうこともあります。
気づいた頃には産卵をはじめていて、ペアの移動ができないことも多いです。
産卵・産卵場所
ペアがそろったら産卵する場所の設置(場所)を用意してあげます。
産卵の際は葉がしっかりしたアマゾンソードなどの水草や流木などに産み付けます。
上部フィルターや外部フィルターの「パイプ」に産み付けることもあります。
※細長く、立ててあるものが好みで、塩ビパイプなどを水槽に入れて立てかけてあげてもよいでしょう。
ディスカスで用いる産卵筒なども有用なアイテムです。
無事産卵が行われると、ふ化するまで親が世話をします。ふ化まで見守ってあげましょう。
複数のペアが混泳している場合、産卵場所は水槽内でマウント上位のペアが1番良い場所を確保し産卵を行います。
下記の動画でエンゼルフィッシュの子育てをしている様子がみれます。是非ご覧ください。
稚魚の育成
ふ化までの期間
産卵後、ふ化するまで親が卵の世話をしてくれるので親魚に任せて大丈夫です。平均して3日程度でふ化しはじめます。水温24~27℃の間で、水温によってふ化の日数の変化があるようです。
ふ化後2~3日はエサを与える必要はありません。
※ふ化したばかりの稚魚はヨークサックから栄養を摂取して成長します。
ふ化するまでの期間、親魚は胸ビレで水流を送ったり、無精卵やカビた卵を取り除いたり、ペアで卵の世話を行います。
稚魚の自由遊泳開始
ふ化してから1週間程度で稚魚が泳ぎはじめます。このタイミングでエサを食べはじめますが、稚魚は小さいので親に与えるようなエサは食べられません。よってブラインシュリンプを与えます。
※親魚が稚魚を守りながら子育てをしてくれます。稚魚が自由遊泳を開始しても親魚とは一緒の水槽で問題ありません。
エサは最低でも1日2回は与えましょう。ブラインシュリンプについては下記の記事で詳しくご紹介しています。あわせてご参照ください。
3週間後には!
ブラインシュリンプを与えはじめてから3週間ほど経過すると、イトミミズやベビーフードなども食べるようになります。与える時にはなるべく小さくして与えるようにしましょう。ふ化してから1カ月程度で外見もしっかりエンゼルフィッシュになります。
大きなサイズの水槽であれば、親魚が稚魚を引き連れて仲良く泳ぐほほえましい姿が見られます!
1~2ヵ月経過
1~2カ月も経過すれば、もう安心できるサイズまで成長しています。水槽が手狭であればこの時期に別の水槽に移してあげることも考えましょう。
成長をした稚魚が空腹時に親をつついたりします。親個体が弱ってしまうことがあるので注意が必要です。逆に親がストレスで稚魚を食べてしまうこともあります。この場合、親を別の水槽へ移動させましょう。
・産卵から2~3日でふ化。
・ふ化後1週間ほどで遊泳・餌やり開始。
・3週間経過後、ブラインシュリンプを1日2~3回与え始める。
・1カ月経過後、人工飼料・イトミミズなどにエサを替えて与える。
・親個体移動のタイミングを見極める!
※エサを与え始めると汚れるのでメンテナンスを行う。スポイトなどでゴミを吸い、減った分量の足し水をする。水質変化の耐性が低いので注意をする。
食卵してしまう時は!
食卵の原因
・他の魚が多い
・飼育スペースが狭い
・飼い主が頻繁に覗く
・水換えなどで急激な変化が起こる
※上記のことから親魚が産卵場所に適していないと判断している場合があります。
・オスの性成熟が不十分。
※受精が上手くいかず、育たない卵は食べてしまいます。
食卵への対策
・むやみにのぞき込んだりしない!
・音や振動を与えない!
・水換えをしたり、急激な水質の変化を与えない!
・電気をつけたままにする OR 電気を消したままにする!
・水流を弱くする!(受精の成功率を上げる)
・他の魚を減らすか、すべて移動させる!
食卵の原因は分からないことが多いので、あきらめずに上記の原因と対策を参考にし次の産卵に期待しましょう。
また、ペアは何度も産卵を繰り返して、少しづつ産卵、子育てが上手になっていきます。
親魚の成長、成熟も見守ってあげましょう。
改良品種のバリエーション
基本カラー
ノーマル・マーブル・ゼブラ・ゴールデン・ホワイト・アルビノ・ブルー・レッドトップです。
鱗の形態
ノーマルタイプ・ダイヤモンドタイプ・透明鱗タイプ。
ヒレの形態
ノーマルタイプ・ベールテールタイプ・その中間タイプになります。
ほとんどのエンゼルは上記の「カラー」「鱗の形態」「ヒレの形態」と3つの組み合わせで品種改良されています。
組み合わせにより多くの改良品種が生み出されています。好みの色・形態を組み交配させてみる楽しみもまた魅力の1つと言えます。
※稚魚は親魚と同じ形質になりません。
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